再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
今日はキッチンを使わせてもらって水ようかんを作ることになっている。

途中、スーパーに寄らせてもらい、水ようかんに必要な材料を買った。

例の変な店員さんに絡まれやしないかヒヤヒヤしたけど、いなくて密かに安堵の息をついた。



電車に乗って二駅先の駅に降りると、悠くんに連れられて十分ほど歩く。


「ここだよ」


たどり着いた先は、新しめの綺麗なマンションだった。

その建物を見た瞬間、一気に緊張しだした。

悠くんの部屋は八階にあった。

末広がりで縁起がいいね、なんてあさっての方向に考えても緊張がやわらぐことは全くない。


「お邪魔します……」


悠くんに続いて、緊張のあまりロボットのようなぎこちない動作でサンダルを脱ぎ揃えていく。

通されたリビングは物が少なくて広々としている。

ここに住んでいるんだ……。

私は不躾だと自覚しながらも、辺りをゆっくりと見渡していた。


「そのワンピース着てくれたんだね。嬉しいよ」


耳をついた悠くんの声に、肩がびくりと小さく揺れる。

悠くんがワンピースに気付いてくれたことに対する嬉しさと気恥しさが混じった気持ちになってしまう。


「おかしいところないかな……」


不安のあまりつい俯いてしまった。

そんな私を悠くんはそっと抱き寄せた。


「とても似合うよ。可愛い」


耳元で囁かれた甘さのある声に、胸がきゅんと高鳴る。


「あ、ありがとう」


可愛いなんてお世辞だとしても、破壊力があるよ……っ。


動揺する私にお構いなく悠くんは、私の髪を手に取り、耳にかける。

その仕草すら私の胸をときめかせていく。
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