再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
もう、限界……っ。


「あ、水羊羹作るね……っ、キッチン、借りてもいい?」

「どうぞ」


私は悠くんから逃げるようにキッチンへ向かった。

背後から悠くんの笑い声が聞こえてくる。

それは学校で他の生徒から向けられる嘲笑とは違い、微笑ましそうな感じに聞こえる。

私はキッチンへ入ると、持参したエプロンを着け始めた。

気を取り直して、水ようかんを作ります……!

水ようかんは材料が水と粉寒天、こしあんの三つだけでできる上に、作り方も簡単だ。

お鍋に水と粉寒天を入れると火にかけて木べらで焦がさないように混ぜて溶かしていく。

溶けたら火を止めてこしあんを入れてなめらかになるまで混ぜる。

再び火をかけて混ぜながら沸騰させていく。

火から下ろして粗熱を取ったあと、持ってきたアルミの流し型に入れる。それを冷蔵庫に入れて冷やせば完成だ。





「一時間冷やせば完成だよ」


身に付けていたエプロンを外し、折りたたんで鞄にしまうと、悠くんの元へ向かった。


「それまでテレビ観てようか。響が好きそうな番組録画したんだ」

「なんだろう?」


リビングにあるソファーに並んで座ると、悠くんはリモコンで操作を始めた。

しばらくすると、テレビに映り始めたのは……。


「か、可愛い……っ」


白と黒のはちわれと三毛の猫だった。

この番組はとある有名な写真家が撮ったシリーズ物の猫のドキュメンタリーものだった。

動物は全般的に好きだけど、中でも猫が一番好き。

お父さんがアレルギー持ちだから家で飼うことが出来なくて、偶然見かける野良猫やペットショップで癒しをもらう。
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