再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
頑張る力をください
八月の終盤の夜。

私はお気に入りのラベンダーの香りがする入浴剤を入れて、湯舟に使っていた。

リラックス効果のある香りに包まれても、二学期が控えているという事実が私を憂鬱な気持ちにさせていく。

今日は午前中から夕方まで悠くんのお家にお邪魔して一緒に過ごして、幸せいっぱいだったのに……。



無視される?

嗤われる?

下駄箱に悪口の手紙やゴミを入れられる?

変な噂が広まる?


マイナスなことしか思い浮かばなくなってしまう。



「やだな……」


大きなため息が零れ落ちていく。


「悠くんに、会いたい……」


ほんの数時間前まで一緒にいたのに、学校のことを考えていたら辛くなって、無性に悠くんに会いたくなった。

我慢しなきゃ。

悠くんにだって友達付き合いがあるんだから。

せめて、SNSに悠くんに言いたいけど言っちゃだめなわがままを吐き出してしまおう。

お風呂に入る前にも、「声が聞きたい」なんて呟いちゃったけどね。


私は早速行動に移そうと、湯舟からあがった。




髪を乾かす前に洗い流さないトリートメントをつける。

悠くんが「髪が綺麗だね」と褒めてくれたから、以前よりもケアに力が入るんだ。

トリートメントのいい香りが、少しだけ気持ちを落ち着かせてくれた。

ショートボブの長さだけど、また伸ばそうかな……。




ルームウェアに着替えてから洗面所兼脱衣所を出て部屋に戻る。

SNSに呟こうとスマートフォンを手にした瞬間……。


「ひゃっ……」


私は落としてしまいそうになった。

なぜなら、悠くんからの着信が来たからだ。
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