僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
葵咲(きさき)、おいで?」

 手を広げて誘ってみるけど、「あ、あの、今はちょっと」と真っ赤になってうつむく葵咲ちゃんに、僕は小さく溜め息をひとつ。


「ほらね、それ。――それなんだよ」


 僕が手術を決意した理由!



 言いながら有無を言わせず距離を削って、葵咲ちゃんを腕の中にギューッと抱きしめる。

「や、あのっ、理人(りひと)っ、今はちょっと」


 慌てて僕から視線を逸らす葵咲ちゃんを捕まえて、ソファに押し倒すと、上からじっと見下ろした。

「目、そらさないで? 僕を見て?」

 言っても無駄だと分かっていても、見て欲しい。

「め、がね……外して……くれたら」

 そうすれば見られるのだと、葵咲ちゃんが目端(めはし)(うる)ませる。


 葵咲(きさき)ちゃんは僕の眼鏡姿が()()()()()ダメらしい。


 好きならもっと見てくれても構わないのに。
 正面から見つめられると照れてしまっていけないんだとか。


 好きすぎてダメ、って僕にはちっとも分からない感覚だ。


 僕はいつだって葵咲ちゃんのこと、狂おしいほど愛しているけれど、それで彼女を見つめられないなんてことはない。

 むしろ「恥ずかしいからもう見ないでっ」って顔を両手で覆われても、その手を外してでも見つめたいくらいだ。


 でも、葵咲ちゃんは違うらしい。
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