僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「あのね、葵咲(きさき)。分かってると思うけど、眼鏡外したら僕、何も見えなくなるんだよ?」


 キミの顔が見えなきゃ、見つめ合っても意味ないじゃないか。


「だって……理人(りひと)、眼鏡かけたらカッコ良すぎるんだもんっ」

 ちょっ、お願い。
 無自覚に僕を喜ばせて(あお)ってくるの、やめて。


 大好きな女の子に「カッコ良すぎる」って言われるのは、男としてすごく嬉しい。

 嬉しいけど……それが距離を詰める弊害になるなんて、意味分かんないだろ?


 眼鏡をファッションのように掛けたり外したり出来る状況ならこれ、緩和されるってことだよね?


 そう考えたら、ほらやっぱり。


「目が不調になるたびにキミに見つめてもらえなくなるのはすごく心外だ。だから僕、レーシック手術を受けようと思ってる」


 それで裸眼の視力が回復すれば、今回みたいに何か目にトラブルが起きても、眼鏡に頼らなくて済むからね。


「それって……入院……するの?」


 途端不安そうに、彼女を押さえつけたままの僕の手をギュッと握ってくる葵咲(きさき)ちゃんが愛しくて、僕は思わず彼女に覆い被さるようにして抱きしめた。
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