僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 僕は先にさっさとこたつから出て立ち上がると、葵咲(きさき)ちゃんが動くのを待つ。

 なのに彼女は小さく丸まったままちっとも動いてくれなくて。


「もしかして、感じすぎて自力じゃ、立てない?」

 聞いたら「理人(りひと)の……意地悪……」とポツンとつぶやいて。

「ん、そうだね。僕はすっごく意地悪なんだ」


 言いながら葵咲ちゃんを温かなこたつからそっと引っ張り出すと、「寒い……」って小さく抗議の声を上げて。

 頬を朱らめて……潤んだ瞳で、懸命に僕を睨み上げてきた。


「うん、寒いね。でもごめんね。僕は意地悪だからやめてあげないよ?」

 そこで葵咲ちゃんにクスッと笑いかけて、
「けど――。すぐに汗ばんじゃうぐらい、キミの身体を火照(ほて)らせてあげることは出来るから。ちょっとの間だけ、寒くなるの、許して?」


 ね、葵咲。

 ()()()()()のセレはとうぶん邪魔しに来ないと思うから。

 だから今日は。
 安心して僕の腕のなかで乱れていいよ?


    END(2021/01/16)
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