僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 ――ねぇ、理人(りひと)、分かってる? 私には、いつだってあなたがいちばん。妬きもちなんて妬く必要ないんだよ?


 だから、さっさと気持ちを切り替えて、私を思いっきり抱きしめて?

 理人のことしか考えられなくなるぐらい、強気に私を征服してよ。


 アーモンドアイの瞳に「今すぐ私を奪い尽くして欲しい」と熱を込めて見つめたら、理人がほぅっと吐息を落として、性急に葵咲の膝裏(ひざうら)(すく)い上げた。



葵咲(きさき)。あんなぬいぐるみを抱きしめるぐらいなら、僕に(すが)りつけよ」


 そうつぶやいて、横抱きに抱え上げた葵咲を見下ろした理人の表情からは、さっきまでの情けない迷いは跡形もなく消え去っていて。
 その瞳には、情事の時にだけ理人が葵咲に見せる強気な光が灯っていた。


 葵咲は理人の腕の中、そんな彼を見上げて小さくコクンとうなずいた。



     END(2021/09/05〜9/6)
< 280 / 332 >

この作品をシェア

pagetop