僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
もういっそ、乗り遅れてしまいたい
「あっちから電話……してもいい?」
夜にホテルから。
いや。寧ろ、それ以外にも割と逐一。
ひと月ほど前からこの出張のことでヤキモキさせられっぱなしの理人だったけれど、出張当日ともなれば観念せざるを得なくて。
眉根を寄せて、玄関先の葵咲にそう問いかけたら「もちろん。――ただ、講義中は出られないけどね」と笑ってくれた。
足元にまとわりついている黒猫に、しゃがみ込んで「葵咲のこと守ってね」と声を掛けたら、葵咲が「心配し過ぎ!」と言って真っ赤になる。
理人の、自分への過保護っぷりは今に始まった事ではないけれど、時折どうしようもなく恥ずかしくなる瞬間がある葵咲だ。
「正直さ、今回の出張、僕はセレと入れ替わりたいくらいだよ」
セレの頭をほこほこと撫でながら理人がはぁっと溜め息を落として。
葵咲はそんなヘタレな理人のことを、たまらなく可愛いと思うのだ。
夜にホテルから。
いや。寧ろ、それ以外にも割と逐一。
ひと月ほど前からこの出張のことでヤキモキさせられっぱなしの理人だったけれど、出張当日ともなれば観念せざるを得なくて。
眉根を寄せて、玄関先の葵咲にそう問いかけたら「もちろん。――ただ、講義中は出られないけどね」と笑ってくれた。
足元にまとわりついている黒猫に、しゃがみ込んで「葵咲のこと守ってね」と声を掛けたら、葵咲が「心配し過ぎ!」と言って真っ赤になる。
理人の、自分への過保護っぷりは今に始まった事ではないけれど、時折どうしようもなく恥ずかしくなる瞬間がある葵咲だ。
「正直さ、今回の出張、僕はセレと入れ替わりたいくらいだよ」
セレの頭をほこほこと撫でながら理人がはぁっと溜め息を落として。
葵咲はそんなヘタレな理人のことを、たまらなく可愛いと思うのだ。