僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

『私ね、とうとうスマートフォンを買ったのですっ。なので、ききちゃん、ペンパルはやめて、メール友達になっていただきたいのですっ。いかがですか?』
 つい最近まで、携帯に全く興味を持たなかったひおちゃんが、ある日見たことのない携帯番号から電話をかけてきて、そんなことを言った。

「え? ひおちゃん、スマホ買ったの!?」

 彼女とは、ずっとずっと文通と、たまに宅電からかかってくる電話とで旧交を温め続けるものだと勝手に思い込んでいた私は、ひおちゃんの告白にすごく驚かされてしまった。
 現に私が引っ越してからの十数年、私たちはそうやってお友達で居続けたんだもの。
 まさかそれが変化する日がくるだなんて、思ってもみなかった。

 しかも、ガラケーをすっ飛ばしてスマホ。

 そういう、どこか予測不能でふわふわと地に足のつかない感じが、何となく彼女らしいな、と思えてしまって。


『じ、実は私、好きな人が出来たのですっ。その彼とお揃いのを買ってしまいましたっ』

 スマホを持ったというだけでも驚きだったのに、好きな人と同じ機種って……え!?

 確か彼女には物心つく前から親同士が決めた許婚(いいなずけ)がいたはず。
 さては、その人とうまくいったってことなのかしら。

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