【クリスマス短編②】想いを伝えるための聖なる夜


 俺は萌衣に近づき、泣いている萌衣をそっと抱きしめた。

「えっ……結城……?」

「もう泣くな、萌衣」

 萌衣の泣いている顔は見たくない。萌衣が笑ってくれているそれだけで、俺は幸せなんだ。

「結城……来てくれてありがと」

「萌衣、お前……フラレたのか?」

 静かにそう問いかけると、萌衣は静かにうなずいた。

「……わたしの好きな人、結婚してたんだ」

「え? それって、既婚者だったってことか……?」

 まさか……。萌衣は結婚してる男を好きになったってことか?

「今思うと、結婚指輪してなかったから、結婚してるとは思ってなくて……。その人も結婚してると言ってなかったから、普通に独身だと思ってて……」

 萌衣はすごく悲しそうだった。 それだけ、その男のことを好きになっていたということなんだと思う。

「……そうだったのか」

「わたし、その人に今日告白したの。……そしたら、俺実は結婚してるんだって、そう言われて……」

 そいつ、萌衣のこと騙してたってことか?許せねえ……。

「それで、泣いてたのか」 

「わたしその人のこと、本当に好きで……」
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