敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
「一緒に取りに行きましょう」と提案したものの、国際線の最終搭乗時刻は出発の十分前と決まっている。

しかも今回使っているのは、空港の端にある一〇六Aゲート。

免税店まで遠く、杖をつく奥さまでは到底間に合わないと判断して代わりに走っているのだ。

絶対に、間に合わせる!

震えながら旦那さまに失態を詫びていた奥さまをなんとか助けたい。

バッグが見つからない可能性も頭をよぎるが、今はあることを祈って行くしかない。


一応、徒競走はいつも一位だったけれど、パンプスにタイトスカートという姿では限界がある。

それでも、まっすぐ前を見据えて手を振り走り続けた。


「あっ」


けれども……途中で右足のパンプスがスポンと脱げてしまい、顔がこわばる。

勢いがつきすぎていたせいで、パンプスが落ちているのは数メートル後方だ。
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