敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
といっても早番の私は帰れるだけで、空港はまだまだにぎわっている。
帰りの電車に乗るため、オフィスから駅に向かう間、ずっと今日の反省をしていた。
「申し訳ございませんが、これは規則でございます。どなたにも公平にお支払いいただいておりますので、どうしてもご無理ということでしたら搭乗のキャンセルをお願いいたします」
無茶な要望に毅然と対処した先輩の言葉を何度も繰り返す。
今度は絶対に自分で断ってみせる。
どんなにすごまれてもひるまない!
自分に何度も言い聞かせて気持ちを鼓舞したあと、もう一度。
「申し訳ございませんが、これは規則でございます。どなたにも公平にお支払いいただいておりますので、どうしてもご無理ということでしたら――」
「搭乗のキャンセルをお願いいたします」
「えっ?」
突然うしろから男性に声をかぶせられ、足を止めて振り返った。
「シンデレラさん、疲れてる?」