敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
彼は右の口角を上げる。

せっかくイケメンにシンデレラと言ってもらえてテンションが上がりかけていたのに、特にいい意味ではなかったようだ。

脱げたパンプスを残して去った行為がシンデレラの物語と同じだっただけだ。


「あー」


恥ずかしくて、落胆の声が漏れた。


「それで、パックスは間に合った?」
「えっ?」
「パックスを捜してたんだろ?」


乗客をパックスと言うこの人は、関係者?


「いえ。パックスはゲートにいらっしゃったんですけど、パスポートの入ったバッグをお忘れになって」

「それで代わりに走ったんだ」

「はい。……あの、職員の方ですか?」


白いシャツにトレンチコート姿の彼は、内勤業務の人かしら?


「そんなとこ」
「どちらの所属ですか?」
「えーっと……整備」


整備士なの?

なぜか答えるまでに間があったが、整備士と聞いてテンションが上がる。


「すごい」
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