敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
この人、絶対に私をからかって面白がっている。


「私、帰ります」
「冗談だ。こういう話にのれないって、男性経験少ない?」


図星を指されたものの、認めるのは悔しい。


「す、少なくないです。行きましょう」
「そうこないと」


あれ……うまく乗せられた?

口を開けば開くほど墓穴を掘っているような気がして、それからは黙っていた。

空港の職員なのは間違いなさそうだし、なにかあったら訴えてやる!



タクシーが到着したのは、落ち着いた雰囲気のフレンチレストランだった。

あやしげな店ならそのままタクシーで逃走しようと思っていたが、少し意外だ。


店内に入ると、蝶ネクタイにギャルソンエプロン姿の四十代くらいのダンディなウエイターが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ」


ウエイターは背筋を伸ばしたまま丁寧に腰を折る。

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