敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
「そうだな」


自分で口にしておいてなんだけど、あっさり肯定されるとなんとも言えない気持ちになる。


「すみませんね。あの日、ずっと見てました?」

「俺も仕事があるからずっとじゃない。パンプスが飛んだときだけ」


飛んだときだけって、決定的瞬間に居合わせたのか。

でも整備士があのフロアにいたの?


「お恥ずかしいです。忘れてください」

「無理に決まってるだろ。あんな強烈な光景」


嘘でも忘れると言ってほしかったのに!

でも、強烈に記憶に残るのは間違いない。
私だって一生忘れられそうにないもの。


「あははは……」


曖昧に笑ってごまかしたあと、彼がアペリティフとして頼んでくれたシャンパンで乾杯した。


「仕事の成功に乾杯」
「乾杯」


ひと口のどに送りながら、今日の仕事は成功だったのだろうかなんて考えてしまう。


「難しい顔だな」
「すみません。毎日叱られているので」
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