敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる～一生、お前を離さない～

ライン整備士は飛行中の不具合の聞き取りをキャビンアテンダントにしたり、点検のあとサインをしてパイロットに飛行機を託したりするため毎日顔を合わせているはずだけど。


「まあ、それなりに」


彼は濁してシャンパンを口にした。
これは、元カノでもいそうな雰囲気だ。


運ばれてきた前菜は、芸術品のようにきれいに盛りつけられている。


アボカドとサーモン、そしてトマトのミルフィーユ仕立ては、フォークを入れるのがもったいなくてしばらく眺めていた。


「食べないの？」
「いえ、いただきます」


パクッと口に入れるとバルサミコ風味のソースが絶品で、頬が落ちそうになる。


「あー、おいしい。幸せ」
「これくらいで？」
「もちろん」


彼は笑っているけれど、毎日のように叱られる生活でも、こうしたちょっとしたご褒美があると頑張れるのだ。


「逢坂さんって、真面目なんだろうね」
「そうでしょうか」