敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
チェックインカウンターの近くだったこともあり、親が手続き中に迷子になったのだろうと思い通り過ぎようとしたが、『飛行機見えた?いつか乗れるといいね』と彼女が話すのを聞いて、ただ空港に飛行機を見に来ただけの子なのだと知った。

乗客の相手だけでもてんてこ舞いのグランドスタッフが、乗客ではない迷子を相手にする必要はない。

言うなれば、完全なるボランティアだ。

案内カウンターの職員に引き渡せばそれで済むのに、彼女は男の子の手を引いて母親を捜し始めたからびっくりだった。

俺は時間もなくその場を立ち去ってしまったが、おそらく保護者が見つかるまで付き合っただろう。

時間的に早番の勤務を終えたあとだったのかもしれない。

それならばますますボランティアだ。

それでも迷惑そうな顔ひとつせず、床に膝をつき優しく話しかける様子はグランドスタッフの鏡のようだった。
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