敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
こうしたレストランに女を連れてくると、すました顔して黙々と食べ進むヤツも多いが、彼女のように素直に感想を漏らすほうがずっといい。

俺も笑顔になれる。


「この肉は、牛一頭からほんのわずかしか取れないんだ。特に和牛は貴重らしい」

「そんなすごいお肉を食べられるなんて、やっぱり幸せ。あっ、でもこんなに貴重なお肉をおごっていただいても大丈夫ですか?」


グランドスタッフはFJA航空の子会社に所属していて、仕事の大変さに比して給料は高くない。

整備士も然りで、有能な技術者の集まりのわりには、待遇はさほどよくないのだとか。

だからか彼女は俺の懐の心配をしている。


「心配するな。食い逃げはしない」
「逃げるとは思ってませんけど」


クスッと笑う彼女は表情が豊かで、すごく素直なのだと思う。

今まで俺の周りにはいなかったタイプだ。

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