敏腕パイロットとの偽装結婚はあきれるほど甘くて癖になる~一生、お前を離さない~
電車が時刻表通りに到着するのが当然という生活をしている日本人は、わずかな遅れにも敏感でよく怒っている姿を見かける。

航空会社のミスであればまだしも、天候不順のため飛べないケースもよくあるのだけれど、その怒りをグランドスタッフにぶつける行為が俺には理解できない。

無理して飛んで、事故にでもなったらどうするんだ。

それに、風が強いのはグランドスタッフのせいではない。


おそらく彼女たちもそう思っているはずだが、それをおくびにも出さず頭を下げ続けなければならないのだ。


「辞めたくならない?」

「うーん。大きな失敗をしたときはへこみますし、泣きたくもなりますけど、パックスの笑顔のために働ける今の仕事は好きなんです。きついけど辞めたくないという感じでしょうか」


思っていた通りの返事で、思わず口元が緩む。


「それでパンプス飛ばしながら走ってるわけだ」
「あれは忘れてください」

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