今日は、クリスマスだ!
「……クラル様の眠ってる姿、子どもみたいだな」

僕はそう呟くと指を弾いた。パチン、と音が鳴った瞬間、景色が変わる。この間、授業で習った魔法と八咫烏の力を組み合わせた魔法で冒険者育成学校まで瞬間移動をしたんだ。

使い慣れない魔法を連続で使ったから、疲れたな……。

僕はその場に座り込むと、大きく息を吐く。初めて使う魔法だったから、使えるかどうか心配だったけど成功して良かった……。

「……お、ルーチェおかえり」

僕がしばらく座っていると、脚立に登って飾り付けをしていたアーサーが僕を見て微笑んだ。

「……初めて使う魔法を連続で使ったから、疲れたよ」

「……何言ってんだ。俺なんか、魔法自体使えねぇのに……」

僕の言葉に、アーサーは苦笑する。

「でも、懐かしいな。前いた世界では、クリスマスだーって皆で騒いでたよね」

僕らに近づいてきたティムは、そう言って脚立に登っていたアーサーを見上げた。

「……そうだね。僕ら3人で馬鹿みたいに騒いでたっけ」

「騒いでたのは、俺だけだろ……この世界にも、クリスマスがあればな……」

アーサーは、悲しそうにぽつりと呟く。そう、この世界には……ハロウィンという文化もクリスマスという文化もない。
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