名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
駅前のタワマンの一室。
私の口の中は、フロマージュに満たされ幸せになっていた。
「夏希、ブレないよなァ」
将嗣に言われ、グッと詰まる。
ゴホッ、ゴホッ、
むせ返った私の背中をさすりながら将嗣が心配そうにのぞき込む。
「おいおい、大丈夫か⁉」
「大丈夫」
「ママは、食いしん坊な上にあわてんぼうだから パパは、心配ですよ。美優ちゃんも心配ですか。じゃあ、二人でママを見守りましょうね」
子供をダシにして好き勝手言ってと頬を膨らませ文句を言う。
「むせたぐらいで大げさな」
「イヤ、俺、本気だけど……。夏希が具合悪い時とか、一人だと大変だろう? この前のヤツに言われて何も言い返せなかったよ。俺、今まで何もしていない。だけど、これからは俺に頼って欲しいんだ」
「待って、待って、お友達でって、言ったでしょう? 今日は、美優の事で会っているんだよね」
「友達にだって頼るだろう? だから、俺を一番に頼って欲しいんだ。それに美優の事ももっと関わりたい」
美優の事を持ち出されると困る。けれど、” 一番に頼る ”といって、思い浮かべるのは、朝倉先生の事だった。