名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 スッと体を反転させて、美優のところに行き将嗣から逃れた。そして、誤魔化気味に話題を変える。

「そろそろ美優のオムツ替えるころかな?」

「おむつ替え? 俺にも出来るかな?」

 頬をポリポリ掻いて、少し照れながらおつむ替えにチャレンジしようとする将嗣。そのパパになろうとしている努力は認め、替えのオムツを渡す。

「はい、頑張れ、新米パパ」
 
 オムツといってもパンツタイプ。生後10ヶ月という月齢は、世の中のすべての物に興味深々でオムツ替えだからといって、おとなしく横になってくれたりはしない。好みの問題もあるだろうが、私は、パンツタイプのオムツの方が履き替えがラクな気がしたのでパンツタイプ派なのだ。

 将嗣が美優を横に寝かせるとすかさず美優は体を捻り、ハイハイの姿勢に持ち込もうと暴れる。こういう時の背筋は乳幼児といえども凄い強力で、押さえつける事が難しい。

「美優ちゃん、おとなしくして」
と、焦っている将嗣を見て、クスクス笑ってしまった。困り果てて助けを求める目で私を見る将嗣にアドバイスを送った。

「今、履いているパンツの横が破けるから破いて脱がして、履かせるパンツの足を通す所に手を入れてから履かせるの」
 すると、悪戦苦闘をしながらなんとか履かせることができた。

 ひと仕事終えた将嗣は、満面の笑みで、美優を高く抱き上げ、抱き上げられた美優はキャッキャッとはしゃいだ。
 楽しそうにしている二人を見ていると、嬉しいような、申し訳ないような、何とも言えない複雑な気持ちにさせられた。
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