名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
帰りの車の中、タワマンから自宅までのわずかな距離だか、振動が気持ち良いのか、たくさん将嗣パパに遊んでもらって疲れたのか、美優はスヤスヤと眠ってしまった。
自宅アパート前に到着し、美優を抱こうとすると将嗣が運転席から周り込んで手を貸してくれた。
「美優ちゃんは俺に任せて」
「ありがとう。助かる」
マザーズバックを肩から下げ家の鍵を取り出した。車から降り、部屋のドアのカギを開けたところで将嗣から美優を受け取る。
「今日は、ありがとう」
「美優ちゃんの認知の件、弁護士の都合が付いたら連絡する。それと、田舎に行く話も考えておいてくれよな」
元カレと元カレの実家には行きたくないけど、孫を見たいという将嗣の両親の気持ちもわかる。うーん、どうしたらいいんだろう。
「田舎に行ったら、喜多方ラーメン食べにいくのもいいよなぁ。馬刺しも隠れ名物で美味いし、絶品手打ちそばの店もいいよなぁ」
「ちょ、ちょっと、将嗣、あなたねぇ。私のこと何か誤解していない?」
「いや、俺は夏希のことを良く理解している」
うんうん、と自信満々に答える。