名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「お母さんと翔兄が話している間、わたしが夏希さんと話をするから大丈夫」
と、由佳さんに真由美さんが返事をしてしまい。由佳さんと朝倉先生は別の部屋に入ってしまった。
二人で何を話すのか心配でもあったが、聞き耳を立てるわけにもいかず、諦めるしかない。
うーっ、気になる!
真由美さんがニコッと私に笑いかけ口を開いた。
「夏希さん、赤ちゃん居たんだ」
「シングルマザーなんだけどね」
「翔兄が、気にしないならいいんだ。翔兄もあんな事があって辛かっただろうけど、乗り越えたんだね」
真由美さんの言葉を聞いて、以前、滝沢さんが言っていた「いつまでも過去の事を引き摺っていないで、落ちて来た幸せを見逃しちゃダメよ」という言葉を思い出した。
朝倉先生の過去を私は知らない。
「あんな事って?」
自分で訊ねておきながら、聞いていいのか分からずドキドキしてきた。
「えっ、ごめん。知らなかったの? てっきり知っているのかと思って……。わたしから聞いたって言わないで」
私は頷いた。