名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

「孫が来た?」
 私の返事を聞いて、朝倉先生は苦笑した。

「夏希さんの事を彼の両親はどう思いますか?」

「あっ! 新しい嫁が来た?」

「そうですね。良い意味で受け入れられれば可愛がられるでしょうし、夏希さんの本意ではなかったにしろ、不倫の期間があるのですから悪い意味でも受け取られる可能性があります」

 漠然と元カレの実家に行くのが気が重いとは思っていたけれど、そこまで考えていなかった。

「夏希さんの場合は、大歓迎されて、お嫁さん候補と勘違いされたのが、そのままの勢いで結婚まで話が進んでも断り切れずに丸め込まれそうで心配だな」

「やだな、朝倉先生いくらなんでもそこまで私、酷くないですよ」

 そう言った私を朝倉先生の瞳が捕らえた。その真剣な瞳に吸い込まれたようなって動けない。

「夏希さん、私は、結構独占欲が強いんですよ」
 優しく頬を撫でられドキッとした。

「私の大切な夏希さんと美優ちゃんに例え本当の父親であっても園原さんに近づかれるのは気が気じゃない。それに彼は夏希さんを狙っているようだし」

 朝倉先生の手の平から熱が伝わる。

「例え血がつながらなくても 私は、美優ちゃんの父親になりたいと思っている」

 朝倉先生の瞳が優しくカーブを描き、近付いてくると唇が重なった。
 短いキスを落とし、額と額がコツンと合わさる。

「私の心を動かしてくれたのは夏希さんなんだよ」
 
 ああ、どうしよう。
 こんなキュンの波状攻撃。
 これは、キュン死しそう!
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