名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 上半身が露わになった姿もファッション誌のモデルのようで、カッコイイ。
 そんなカッコイイ人の前で、丸みを帯びた体を晒すのはイタタマレナイ。
 大人の女として、かっこよくベッドに誘いたいけど、そんな ”出来る女風”のキャラではない。
 翔也さんのおへそを見つめたまま固まってしまった私。

 「夏希さん、視線が熱いですよ」

 えっ!? まって、まって、もしかして、下半身眺めていたように思われている? 
 慌てて翔也さんの顔を見上げると、フッと、目を細めた。翔也さんは腕を回し、私は縦抱っこに持ち上げられ、ベッドの上に降ろされた。

 私の両手をベッドに縫い留めると艶の含んだ瞳で見下ろされ、
 「夏希さんの期待に添うよう、がんばりますよ」
 と、キスを落とされた。

 ベッドの上で腕を抑えられて、熱い口づけをされている。
 いつもと違う角度で、下から見上げる翔也さんは、濃厚な艶香を放っている。
 それだけでさっき飲んだワインが、甘く、熱く、全身に回っていくような錯覚に陥る。

 薄く開いた唇からぬるりと翔也さんの舌が忍び込んでくる。厚みのある舌で歯列をなぞられ、上口蓋をなでられ、口の中を蹂躙する翔也さんの舌が、私の眠っていた官能を引き起こす。
 クチュクチュとリップ音が響き、耳からも愛撫されているようだ。
< 172 / 274 >

この作品をシェア

pagetop