名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「夏希さんの香りが、ウチの香りになっている」
髪に手を添えられ、何だかくすぐったい気持ちになる。
「翔也さんのシャンプーを使ったので……」
私がそう言うと髪の毛の間に指を差し込み撫でるように髪を梳かれ、チュッと軽いキスを落とされた。
切れ長の優しい瞳が、私を見つめる。その目に吸い込まれそうでドキドキしてしまう。
ホワッと朝倉先生のシャンプー香りが強くなり、その香りに包まれながらじゃれ合うようにキスを返した。
「私、我儘な事を言って困らせてしまうかもしれませんが、翔也さんと幸せな時間を過ごしていきたいと思っています」
朝倉先生の腕に力が籠りにギュッと抱き留められた。
胸に顔を寄せ、心音を聞いているととても安心する。
朝倉先生と私が抱き合っているのを見て美優がオモチャを放りだし、ハイハイをしながら近づいてきた。
朝倉先生が手を伸ばし、美優も抱きかかえ、そっと呟く。
「三人で幸せの時間を刻もう」
リビングで日向ぼっこをしているだけの時間ときが、温かくて特別な時間になった。
なんでもない日常が一番素敵で特別なのかもしれない。