名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

都内を抜け東北自動車道に入り、途中トイレ休憩を挟みながら3時間程で会津若松に到着。古くからの城下町と言うだけあって、街は栄えている。

「どうする? 観光する? ここまで来たなら喜多方まで行ってラーメンでも食べるか。お昼だし」

「えっ、いいの?」

 前に言っていた、喜多方ラーメンのプランを実行してくれるとは思わず驚いている。すると紗月が声を上げた。

「やった! せっかく来たんだから行こうよ!」
 
「お姫様たちの仰せのままに」
 ニヤリと将嗣が笑った。

 若松市内からさらに車で30分ほど行くと喜多方市内に入る。道路には、観光用の馬車が走っている。その背景の蔵作りの建物も美しい。
珍しい光景にいつかイラストの資料に使えるかもと、車内から写メを撮った。

 お目当てのラーメン屋さんに到着する。将嗣が私たちに向かってふわりと優しい笑顔を向けて言う。

「俺、美優ちゃんと待っているから二人で食べておいで」

「えっ?」

「ほら、お店混んでいるし、赤ちゃん向きじゃないから俺は美優ちゃんとお散歩デートしている。食べ終わったら電話して」

 確かに人気のラーメン屋さんみたいで、お店の外に数人の列が出来ていた。

「そんな、悪いよ。みんなで食べれるお店でもいいのに……」

「いや、せっかく福島まで来たんだから福島の美味しい物を食べてもらいたいの。俺は、いつでも食べれるんだから気にすんな」 
 と、頭をポンッと撫でられた。
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