名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「孫が抱けるとは思わなかった。ありがとう、夏希さん」
そう言うとお父さんの目が潤み一筋の涙がこぼれ、慌てて涙を拭っていた。お母さんも目を真っ赤にしてその様子を見ている。
美優にとっておじいちゃんおばあちゃんに当たる二人、将嗣の御両親に美優の存在を喜んでもらえて、胸が詰まった。
美優にしてみれば、知らない家で知らない男の人に抱かれた状態。その事にビックリして泣き出してしまった。
「ああ、すまないね。泣かせてしまった」
将嗣のお父さんがオロオロしていると、将嗣がスッと手を伸ばし抱き上げヨシヨシとあやせば、機嫌を直す美優。
将嗣に抱っこされて甘える仕草を見せる美優を将嗣の御両親は目を細めていた。
「将嗣によく似ている」
とお母さんが呟き、お父さんが嬉しそうに頷く。
その様子を眺めてたら、将嗣のお父さんが私の方に向き直りゆっくりと頭を下げた。
「谷野さん。詳しい話は将嗣から聞いている。このバカが申し訳ない」
「やめてください……」
「いや、結婚していながらよそ様のお嬢さんに手を出すなんて、どうしようもない。きちんと責任を取らせるからどうか許してやってくれないか」
”きちんと責任” という言葉を聞いて、スッと背筋が冷えた。
親の世代での ”きちんと責任” という意味は、” 結婚して責任を取る ”という意味である。