名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
もう、何がなんだか頭が真っ白になってしまって、その後、看護師さんと何を話したのか、「はい」と返事を返していた事しか覚えていない。
看護師さんと入れ違いに美優を抱いた紗月が病室に入って来た時には、ホッとして声を上げて泣いてしまった。
「夏希ちゃん、連絡しておくところある?」
私が落ち着きを取り戻した頃に紗月に声を掛けられ、ハッとした。
仕事も自宅に帰らないと出来ない。仕事先に連絡をしなければ……。
朝倉先生にも連絡したいけど、どうしよう。
「病室って、携帯電話ダメなのかな?」
「うーん、病院って電子機器はお切りください。なイメージだけど看護師さんに聞いてくるね」
と言って、紗月は美優を抱いたまま病室を出て行った。
「1か月入院って、ココ福島の病院だよね。どうしよう」
紗月や将嗣だって、明後日から仕事だろうし、見ず知らずの土地で美優を抱えてどうしていいのか、途方に暮れる。