名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 12月24日、クリスマスイブの日。ギブスが取れて退院となった。
 病室で荷物を片付けた後、大事を取って車いすに座り、膝の上には美優がちょこんと乗っている。
 
「さあ、夏希さん。家に帰りましょうか」
「はい」

 美優の誕生日に婚姻届けを出し、晴れて、私は朝倉夏希になり、娘は朝倉美優になった。
 朝倉先生に車いすを押してもらい病室を後にしアパートではなく、朝倉先生の高級マンションに向かう。

 将嗣とは、話し合いをして美優の面会を月2回と決めて親子の時間を作る事にした。
大きくなるにつれ子供の都合も出て来るだろうから、その都度相談して話し合い、みんなで美優の幸せを考えて、一番良い答えを探して行く。

 やっと1歳になったばかりの私たちの天使、美優の人生はまだまだこれから。

 美優のパパになった朝倉先生の車にはチャイルドシートも積まれている。そのチャイルドシートの中で美優は夢の中。

「ふふっ、可愛い。やっと親子3人一緒に居れますね」

「ああ、待ち遠しかったよ」

 朝倉先生のマンションに到着して地下の駐車場から車いすに乗って部屋まで移動。その間も私の膝の上でスヤスヤ眠ったままの天使の寝顔を見つめる。

 部屋に入ると朝倉先生が美優を抱き上げ、ベビーベッドにそっと寝かせた。
「次は、夏希さん」
 朝倉先生のイケボを耳元で聞き、ふわりとお姫様抱っこをされて、寝室のベッドに下ろされた。
 病院から退院してきたからベッドに居るのは不自然じゃない。けれど、入籍してから初めてのシチュエーションにドキドキしてしまっている。
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