名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
運命とは不思議なもので、前を向いて歩きだしたことによって、歯車が噛み合い動き出す。
長いこと保留にしていた仕事を引き受け、出版することになった。その本の表紙を依頼したイラストレーターがあの日、妊婦だった彼女だと、誰が予想しただろう。
受け取った天使のイラスト。その天使の羽は、力強く美しい。そして、愛するものを包み込むように温かい。
私の所に舞い降りた、あの日の小さな天使は、腕の中でスヤスヤと眠っている。
確かな重さと温かさが腕の中にある。
横で笑う彼女は柔らかく微笑み、左手の薬指に指輪が輝く。
1歳を迎えた小さな天使の誕生日に彼女と入籍をした。
【終わり】