名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
『おはようございます。
おかげさまで体調が回復しました。
朝倉先生のご都合が大丈夫でしたら
イラストの打ち合わせ如何でしょうか』
朝、谷野さんからのメールが届いた。
昨日、あんなに具合が悪そうだったのに無理をしていなければ良いのだけれど……。
一人で頑張る事に慣れているのか、人に甘える事が下手で、いつも頑張り過ぎるほど頑張っている。
裏表の無い真っ直ぐな性格。子供に対する深い愛情。
そして、危なっかしくて目が離せない。
昨日だって、私が行かなかったら
あの高熱の中一人で、美優ちゃんの世話をしながら痛みに耐えていた事だろう。
彼女の事を考えるとフッと笑みがこぼれる。
初めて会った時は、出産に付き合わされた。
あの時、彼女を助けなければ、私の心は今も闇を彷徨い、凍りついていた事だろう。
命の尊さ、輝き、生きるという大切な事を思い出させてくれた。
彼女が、あの日の妊婦さんだったとは、神様は悪戯が好きなようだ。