名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
午後1時の約束に間に合うように少し早めに家を出る。
道路が空いていて、約束の時間より少し早くついてしまいそうだな。
約束の時間より、早くインターフォンを押すと
慌てた彼女が飛び出して来るだろうか?
想像すると本当に起こりそうだと思った。
ああ、本当に浮かれているな。
そう思いながら角を曲がり彼女のアパート前に車を付けると
部屋の前で、男と揉めている様子が見えた。
彼女は、美優ちゃんを抱いて何やら男に向かって文句を言っているようだ。
慌てて車を降り、彼女と男の間に割り込んだ。
「谷野さん、大丈夫? 」
「朝倉先生ありがとうございます。昔の友人が、アポなしで来てしまったので、今、帰って頂く所だったんです」
谷野さんが珍しく語気を強めている。私は彼女を庇うように自分の背に隠すようにして、立ちはだかった。
すると、相手の男は敵愾心むき出しの様子で自己紹介を始めた。
「夏希の仕事相手の方ですね。夏希がいつもお世話になっております。私、美優の父親の園原将嗣と申します」
コイツが、谷野さんの……。