名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~


「ごめん、頭に血が上ってしまった」

 謝りながらも彼女を抱く腕に力がこもる。温かく柔らかな感触も仄かに香る甘い匂いも離したくない。

 「朝倉先生? 」

 あっ、暴走しているなっと、ハッとして腕を解いた。
 
 「ごめん、ごめん」

「谷野さんのプライベートに口を挟んでしまって、すまなかったね」

 彼女は、私の行き過ぎた行動も咎めることなく、優しく微笑み言葉を紡ぐ。

 「そんな、朝倉先生には、この子の産まれる前から助けてもらっています。
産院で(仮)パパまでして頂いているんですもの。朝倉先生無しでは、私たち親子はこうして暮らせなかったかもしれません。朝倉先生には感謝しています。美優も私も朝倉先生のことが大好きですよ」
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