名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
なんの駆け引きも無く、私の欲しい言葉を投げ掛けてくれる。
ささくれ立った心が穏やかになり、温かくなった。
「君たちは、特別だからね」
頬を赤らめて俯き、視線を泳がせ明らかに動揺している。
愛らしい彼女を見つめると不意打ちとも言える言葉を放たれた。
「朝倉先生も私たちにとって特別な存在です」
頬を赤らめ上目遣いで言われ、思わず視線を逸らす。
特別ならばこれぐらいは許されるはずだ。
「名前……。朝倉先生では無く違う呼び方で、呼んで欲しい」
いい年をしてイマドキ中学生でもやらないようなやり取りがくすぐったい。
「えっ? 名前……? 」
ほら、彼女だって戸惑っている。でもその様子も可愛らしい。
「そう、名前」
おずおずと私の名前を口にする。
「翔也……先生」
「はい。……夏希さん」
名前を呼ぶと真っ赤になっている。本当に可愛い。