名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「翔也先生、そろそろ打ち合わせをしませんか」
落ち着かない様子で、仕事を切り出す彼女の意思に添うよう返事をして、美優ちゃんをベビーサークルにおろし、作業台に二人で向かい合う。
肩が触れ合う距離、彼女の柔らかな石鹸のような甘い香り、意識しているのがわかる。
彼女のマウスを持つ手に手を重ねた。
「あ、朝倉先生」
焦りまくる彼女の様子が可愛いくて、もっと焦らせたくなる。
「夏希さん、呼び方」
「……翔也……先生、あの手が……」
「手が? 」
もっと、焦って、彼女の中が、私のことでいっぱいになればいい。
「手が……重なっています」
「手を離したくないんだ」
不誠実な男のことなど忘れて、私の手を取り、私で満たされればいい。
視線が絡むと抑えきれずに唇を奪うと彼女の熱を感じる。
彼女が私の背中に手を回し私を求める。
やっと、手に入れた。