名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
「いたっ! いたたたっ!」

 顔を歪ませ、痛みを逃がそうと苦しい息を吐く、そんな私を心配そうにイケメンが支えてくれる。それでも押し寄せる波のように痛みが私を襲う。見ず知らずのイケメンの腕にギュッとすがった。

「大丈夫ですか? もう少しで病院だから」

「だめ! もう、産まれるっ!!」

「ええっ! 産まれる? 妊婦なの? コートで隠れて気が付かなかった。もう少し我慢して!」
 
「ううっ……」


 病院に着くと連絡を入れていたせいか、看護師さんがストレッチャーで待ち構えていて、タクシーから降りるなりストレッチャーに乗せられた。

「はい、パパさんは荷物を持ってついて来て」

「えっ? ああ」

痛みが辛いながらもイケメンに迷惑を掛けられないと思い、荷物を受け取ろうと手を伸ばす。すると、イケメンはその手を握り返し励ましの言葉をくれる。

「大丈夫か? がんばれ!」

 マジ、神か 
 ああ、尊い!尊すぎるー!!
 一瞬、痛みが飛んで行く尊さだ!
 でも、痛い……。
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