名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
入念な打ち合わせののち下絵を提出。
 下絵の段階で担当さんから連絡が入り、何度もリテイクをもらった。
 その度にもちろんやり直し、プロの仕事なのだから仕方がない。

 ただ、赤ちゃんのお世話に追われ、気持ちに余裕がないのか、今までこんなにリテイクを出された事は無かった。

 大きな依頼に舞い上がったけれど自分には荷が重い仕事だったのでは? と、自信まで無くなってきた。
 
 たくさんの線の中から一本の線を選んで一番きれいなラインを書き入れる。
細部にまで気を使って書いているつもりだけど、「気に入らない」の一言で終わり。それは、何時間掛けて書いたものであろうと気に入らなけばダメなのだ。

 カメの歩みでOKをもらう。
 下書きの絵を書き、細部に筆入れをしていく、この段階でもリテイクが出る。
 自分の至らなさで本の出版に影響が出たらどうしようと不安は募るばかりだった。
 そして、とうとう、ご本人様より直で電話が入った。


 人気作家、朝倉翔也様。憧れのご本人とお話をするのにこんなに憂鬱な気持ちでお話するなんて……トホホ。
< 9 / 274 >

この作品をシェア

pagetop