名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 そこに立っていたのは、元カレの園原将嗣だったからだ。
 
 
 なんでコイツがココにいるんだ?
 突然の予想外の出来事に上手く脳内での処理ができず、私のまわりには [?]マークが飛びかっている。

 「夏希、これ」
 と、将嗣から差し出された袋は、有名店のロゴがプリントされていた。
 ココのフルーツショートケーキ甘さも控えめスポンジもフワフワ、高級フルーツが上に乘っていて、そんじょそこらのとは、一味違い、メチャクチャ美味しいのよね。
 ケーキも最近コンビニやスーパーのケーキばっかりで、デパートに入っているようなメーカーのケーキを食べるような贅沢は中々出来ない。

 フラフラと危うく受け取りそうになって、ハッとした。
「” 夏希、これ ”じゃ、なくて、なんで将嗣がココにいるの?」

「休みだから夏希と美優に会いに来たんだよ」

「あのね。私にも都合ってものがあるのよ。連絡も無しに急に来られても困るの! 今日だってこれから、仕事の打ち合わせがあるんだから!」

 そう、もうすぐ朝倉先生が来る。
 将嗣には、一刻も早く立ち去ってもらいたい。

「俺、夏希の電話番号もメールアドレスも知らないし、しょうがないだろう?」

 そうだった。別れた時に電話も解約して、電話番号も替えて、メルアドも替えたんだ。
 そして、元カレだから家の場所は知られていた。
 「チッ」心の中で舌打ちをした。
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