名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 そして、今まさに車から降りようとしている。

 イヤーーーーッ!!(心の叫び)

「仕事相手が見えたからもう帰って!」

「夏希の仕事相手なら挨拶しておくよ」

「バカな事を言わないでよ。なんで将嗣が挨拶すんのよ! 早く帰って!」

「美優ちゃんが離してくれないんだよ」

 将嗣に言われて美優を見ると、その小さな手は、将嗣の人指し指をギュッと握っている。

「美優、ばっちいから離しなさいね」

「ヒデー!」

 玄関先で、ギャーギャー騒ぎたて将嗣を追い返そうと躍起になった。

 朝倉先生が、慌ててこちらにやってきた。

「谷野さん、大丈夫?」

 あああぁあああ!!(心の叫び)
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