御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
隆の顔つきが、とても真剣だったので、友人知人に絵を見てもらうような気楽さとは決定的に違っていた。
普通絵を見せてから夏美の得られるリアクションとしては、いいね、いいねと褒めちぎるか、よくわからない、と突き放されるかの二つが主だった。
隆の場合は、そのどちらでもなさそうだ。
隆さん…本当に、どういう人、なの…?
「あれ。女の子の絵がいくつも…これ、同じ女の子だよね」
隆がスケッチブックをめくる手を止めた。夏美がああ、それ、と答える。
「実家の隣に住んでる女の子なんです。女の子のお母さんと幼なじみで、赤ちゃんの時から描いてあげてて。もうその子、七歳になったんですけど、いまだに描いて、って催促されて。実家に帰るたびに描いてます」
「ああ…写真と違う面白さがあるね。表情がすごくイキイキしてる」
「その子、舞ちゃんって言って、すごくひょうきんな子で。絵を描こうとすると、変顔とかするんですよ。それを描いちゃう私も、私だけど」
「いいね。舞ちゃんを描いてる瞬間の空気が、すごく楽しそうなのが伝わってくるよ」
隆はそう言うと、絵から目を離して、夏美を見つめた。
「この女の子の連作、すごくいい。このファイルとこの連作、リリス出版に持って行くといいよ」
「リリスって」
先日の電話の際も、隆はそんなことを言っていた。
「リリス出版って、老舗の子供向けの本の会社ですよね」
夏美は、これまで子供向けのつもりで絵を描いたことがなかったので、隆が何故リリスを推すのかわからなかった。
「うん。夏美ちゃんは、リリスで見てもらおうと思ったことはなかったの?」
「はあ…どちらかというと、情報誌とか女性誌とか…」
自分が読むような雑誌の読者層をターゲットにしていた。自分と年齢が近い分、ニーズもそこにあるのでは、と考えていたのだ。
「そうか…まあ、試しにリリスに行ってみなよ。いろんなとこに持っていくのも勉強になるんじゃない」
「はあ」
夏美としては何となく腑に落ちなかったが、せっかく隆がそう言うのなら、という気になった。
普通絵を見せてから夏美の得られるリアクションとしては、いいね、いいねと褒めちぎるか、よくわからない、と突き放されるかの二つが主だった。
隆の場合は、そのどちらでもなさそうだ。
隆さん…本当に、どういう人、なの…?
「あれ。女の子の絵がいくつも…これ、同じ女の子だよね」
隆がスケッチブックをめくる手を止めた。夏美がああ、それ、と答える。
「実家の隣に住んでる女の子なんです。女の子のお母さんと幼なじみで、赤ちゃんの時から描いてあげてて。もうその子、七歳になったんですけど、いまだに描いて、って催促されて。実家に帰るたびに描いてます」
「ああ…写真と違う面白さがあるね。表情がすごくイキイキしてる」
「その子、舞ちゃんって言って、すごくひょうきんな子で。絵を描こうとすると、変顔とかするんですよ。それを描いちゃう私も、私だけど」
「いいね。舞ちゃんを描いてる瞬間の空気が、すごく楽しそうなのが伝わってくるよ」
隆はそう言うと、絵から目を離して、夏美を見つめた。
「この女の子の連作、すごくいい。このファイルとこの連作、リリス出版に持って行くといいよ」
「リリスって」
先日の電話の際も、隆はそんなことを言っていた。
「リリス出版って、老舗の子供向けの本の会社ですよね」
夏美は、これまで子供向けのつもりで絵を描いたことがなかったので、隆が何故リリスを推すのかわからなかった。
「うん。夏美ちゃんは、リリスで見てもらおうと思ったことはなかったの?」
「はあ…どちらかというと、情報誌とか女性誌とか…」
自分が読むような雑誌の読者層をターゲットにしていた。自分と年齢が近い分、ニーズもそこにあるのでは、と考えていたのだ。
「そうか…まあ、試しにリリスに行ってみなよ。いろんなとこに持っていくのも勉強になるんじゃない」
「はあ」
夏美としては何となく腑に落ちなかったが、せっかく隆がそう言うのなら、という気になった。