御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
「僕が料理ができないのは知ってるよね?」
夏美が頷く。隆は、ほうっておくと一週間ゼリー飲料ですますような食に無頓着なところがあるのだ。
「僕、夏美ちゃんのご飯がいつも食べたい。イラストの仕事が忙しくない時だけでいいから…いいかな?」
今度は夏美が吹き出す番だった。
「そんなこと!言ったでしょ、私が隆さんを幸せにする、って。あれはね、隆さんにご飯を作ってあげたいっていうのも入ってたの」
「ほんと?じゃあ今夜、オムライス作ってくれる?」
目を輝かせて隆が言う。
「お安い御用!」
その夜は夏美がオムライスを作った。キッチンの棚にデミグラスソースの缶があるのを見つけたので、それも使うと隆は、プロの味だ!とご機嫌だった。夏美はそんな隆を見て得意になった。
ご飯を作って喜んでもらえる。すごくシンプルだけど、これは夏美にとって間違いなく幸せのカタチのひとつだった。
明日も、明後日も、ずーっと、隆さんにご飯が作れる。結婚っていいかもしれない。
オムライスを食べながら、改めてそんな風に思った。
デミグラスソースは缶詰の割にいい仕事をしていて、コクがあって美味しい。
そこで、夏美はふと思った。
「あれ?でも、隆さん、料理しないからこんな缶詰だって買わないんじゃ。どうして、缶詰があったの?」
「ああ。トシがね、非常食代わりに置いとけって言ってたことがあって。その時にまとめて色々買っておいてそのままになってたんだ」
「そういうこと。ねえ、なんかトシさんって隆さんのお母さんみたいね。すごく世話焼きさんなのね」
ふかふかタオルのことといい、行き届いた気遣いは母親のそれのようだ。
「うん?トシは、お母さんっていう年齢じゃないよ。そこは考えてあげてよ」
ふうん、と夏美は頷きながら、何か腑に落ちなかった。
「そうそう、夏美ちゃん、いつまでバイトに行くんだっけ」
「来週いっぱい。急で申し訳なかったんだけど…」
夏美としては三年もお世話になったことだし、もう少し勤めることも考えた。しかし隆の部屋がバイト先からは遠すぎてバスを乗り換えなければならない。通勤時間だってバカにならない。イラストの受注件数を考えたら急だけれど辞めるしかなかった。
夏美が頷く。隆は、ほうっておくと一週間ゼリー飲料ですますような食に無頓着なところがあるのだ。
「僕、夏美ちゃんのご飯がいつも食べたい。イラストの仕事が忙しくない時だけでいいから…いいかな?」
今度は夏美が吹き出す番だった。
「そんなこと!言ったでしょ、私が隆さんを幸せにする、って。あれはね、隆さんにご飯を作ってあげたいっていうのも入ってたの」
「ほんと?じゃあ今夜、オムライス作ってくれる?」
目を輝かせて隆が言う。
「お安い御用!」
その夜は夏美がオムライスを作った。キッチンの棚にデミグラスソースの缶があるのを見つけたので、それも使うと隆は、プロの味だ!とご機嫌だった。夏美はそんな隆を見て得意になった。
ご飯を作って喜んでもらえる。すごくシンプルだけど、これは夏美にとって間違いなく幸せのカタチのひとつだった。
明日も、明後日も、ずーっと、隆さんにご飯が作れる。結婚っていいかもしれない。
オムライスを食べながら、改めてそんな風に思った。
デミグラスソースは缶詰の割にいい仕事をしていて、コクがあって美味しい。
そこで、夏美はふと思った。
「あれ?でも、隆さん、料理しないからこんな缶詰だって買わないんじゃ。どうして、缶詰があったの?」
「ああ。トシがね、非常食代わりに置いとけって言ってたことがあって。その時にまとめて色々買っておいてそのままになってたんだ」
「そういうこと。ねえ、なんかトシさんって隆さんのお母さんみたいね。すごく世話焼きさんなのね」
ふかふかタオルのことといい、行き届いた気遣いは母親のそれのようだ。
「うん?トシは、お母さんっていう年齢じゃないよ。そこは考えてあげてよ」
ふうん、と夏美は頷きながら、何か腑に落ちなかった。
「そうそう、夏美ちゃん、いつまでバイトに行くんだっけ」
「来週いっぱい。急で申し訳なかったんだけど…」
夏美としては三年もお世話になったことだし、もう少し勤めることも考えた。しかし隆の部屋がバイト先からは遠すぎてバスを乗り換えなければならない。通勤時間だってバカにならない。イラストの受注件数を考えたら急だけれど辞めるしかなかった。