御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
「そうだね。この数ヶ月が、夏美ちゃんのイラストレーターとしての技量が問われる正念場だ。仕方ないよ。それに、夏美ちゃんが朝ゆっくりだと朝ご飯も食べられるし…」
 隆がうっとりと目を細める。
「もう。そんなことばっかり。でも、私も朝起きて、隆さんがいるのは嬉しいけど」
「僕だってそうだよ。…あ、そうだ忘れてた。来週、『ICHIGO』の出版記念パーティがあるよ。濱見崎先生の予定がやっと取れた、ってさっき連絡があった」
「そうなの。濱見崎先生には『ICHIGO』が完成してからはお会いしてないから、御礼を言わなきゃ。こんなにイラストの仕事がもらえるのは、やっぱり先生のお陰でもあるから…」
「そうだね。僕も、あんなに『ICHIGO』のプロモーションをやってくれるとは思ってなかった。自分のネームバリューにあぐらをかいてない。さすが濱見崎さんだ」
「パーティにはたくさんの人が来る?隆さんが選んでくれた服を着ればいいかな?」
「そうだね。ごくうちうちのパーティだし。あ、そうそうトシも呼んであるよ」
「トシさんが!」
 夏美はぱあっと顔をほころばせた。夏美も隆の生活にすっかり溶け込んでいるトシに一度会ってみたいとずっと思っていたのだ。トシが選んでくれたものをどこに行ったら揃えられるのか教えてほしかった。特にあのふわふわタオルをどうやって見つけたのかぜひ聞きたかった。
「嬉しい。いろいろ教えてもらわなくちゃ。トシさんってどんな感じ?しゃべりやすい?」
「そうだな…気さくだから、夏美ちゃんも喋りやすいと思うけど何たって」
 そこまで隆が言ったところでインターフォンが鳴った。隆がシャンパンを注文していたんだった、と玄関に行く。夏美は隆がなんと言いかけたのか気になったが、隆が美味しいシャンパンを開けてくれて、その疑問もどこかへ行ってしまった。

「すごい…想像はしてたけど、本当にリッチなマンションに住んでるのね」
 バイトの最終日。夏美は隆と自分が住むマンションに、宮下あずさを連れてきていた。最初は約束してなかったのだが、当分顔を合わせないとなると、別れ難くなり、あずさも夏美の新居が見たいと言って、やってきてくれたのだ。
「うん。どこもかしこもピカピカだから、キッチンに立つ時、まだ緊張するよ」
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