御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
嘘はつらくて
月曜日になり、隆は空港へ向かい、宮崎へと飛び立っていった。隆のいなくなった部屋は、いつも以上にがらんとして見えた。
「ほんとに…寂しいなあ」
一週間も一緒に過ごさないなんて、この半年なかったことだった。しかし、ぼんやりしているわけにもいかなかった。締め切りの近いイラストが二つあった。
「気持ちを切り替えて、ちゃんとやろ」
夕方になると敏恵の襲撃にあうかもしれない。午前中と午後にしっかりやるのが大事なのだ。
月曜日から水曜日まで、隆の不在は寂しかったが、毎晩、電話で話したので、何とかやり過ごせた。
水曜の夜、隆が電話のときに言った。
「夏美ちゃん、明日がキャンプなんじゃなかった?」
「あ、そうなの。今日、トシさんがいきなり来て、明日着ていく服の相談受けた」
そう言うと、隆は吹き出した。
「あいつ、そういうとこ、あるよね。一人でどこまでも突っ走るタイプっていうか。俺も大学のゼミ旅行に行くとき似たような目にあったよ」
「変わってないんだねえ。トシさん」
和やかに話しているつもりだったが、夏美はやはり嘘をついていることが気になってしまう。
今日の絵本のイベントでの話しをひとしきり聞くと、夏美は言った。
「じゃあ、明日は早いからそろそろ…」
「夏美ちゃん」
隆が声を改めて言った。
「夏美ちゃん、僕に何か隠し事があるんじゃないの」
びくん、と体まで反応しそうになるのをこらえて夏美は、何言ってるの、と言った。
「ほんとう?僕の板チョコ、食べたの隠したってバレるんだからね」
隆の好物の輸入雑貨店でしか買えないチョコレートのことだった。
「もう。食べてないってば」
笑いながら、夏美はほっとしていた。
「じゃあ、いいけど…最近、天気が不安定だから気をつけて行ってきてね」
隆の声が心配そうなのが、夏美の胸のうちをちりちりと焦がす。
木曜日。空はすっきりと晴れていて、雲ひとつなかった。
「すごい晴天。私の日頃の行いがいいせいね!」
敏恵は夏美を迎えに来た時から上機嫌だった。赤いスポーツカーでやって来て、乗り込む夏美をせかした。濱見崎とは、キャンプ場で待ち合わせることになっている。
「ほんとに…寂しいなあ」
一週間も一緒に過ごさないなんて、この半年なかったことだった。しかし、ぼんやりしているわけにもいかなかった。締め切りの近いイラストが二つあった。
「気持ちを切り替えて、ちゃんとやろ」
夕方になると敏恵の襲撃にあうかもしれない。午前中と午後にしっかりやるのが大事なのだ。
月曜日から水曜日まで、隆の不在は寂しかったが、毎晩、電話で話したので、何とかやり過ごせた。
水曜の夜、隆が電話のときに言った。
「夏美ちゃん、明日がキャンプなんじゃなかった?」
「あ、そうなの。今日、トシさんがいきなり来て、明日着ていく服の相談受けた」
そう言うと、隆は吹き出した。
「あいつ、そういうとこ、あるよね。一人でどこまでも突っ走るタイプっていうか。俺も大学のゼミ旅行に行くとき似たような目にあったよ」
「変わってないんだねえ。トシさん」
和やかに話しているつもりだったが、夏美はやはり嘘をついていることが気になってしまう。
今日の絵本のイベントでの話しをひとしきり聞くと、夏美は言った。
「じゃあ、明日は早いからそろそろ…」
「夏美ちゃん」
隆が声を改めて言った。
「夏美ちゃん、僕に何か隠し事があるんじゃないの」
びくん、と体まで反応しそうになるのをこらえて夏美は、何言ってるの、と言った。
「ほんとう?僕の板チョコ、食べたの隠したってバレるんだからね」
隆の好物の輸入雑貨店でしか買えないチョコレートのことだった。
「もう。食べてないってば」
笑いながら、夏美はほっとしていた。
「じゃあ、いいけど…最近、天気が不安定だから気をつけて行ってきてね」
隆の声が心配そうなのが、夏美の胸のうちをちりちりと焦がす。
木曜日。空はすっきりと晴れていて、雲ひとつなかった。
「すごい晴天。私の日頃の行いがいいせいね!」
敏恵は夏美を迎えに来た時から上機嫌だった。赤いスポーツカーでやって来て、乗り込む夏美をせかした。濱見崎とは、キャンプ場で待ち合わせることになっている。