御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
牡蠣料理もすごく美味しかったが、まだお腹的には余裕があった。めったに食べれないステーキに、夏美の心は躍る。えいっとひと口食べてみる。みるみる笑顔になってしまう。
「美味しいです…!」
「でしょう。牡蠣だけじゃなくて、他のも美味しいんですよ。僕もいただこう」
二人で、美味しいと言い合いながら二つの皿をカラにした。
「美味しかった…すごい、美味しさでした」
夏美は目をうるうるさせながら言った。こんなにまともにお腹いっぱいに食べたのはいつ以来だろう。お腹もいっぱいだったが、ご馳走してくれた隆にも感謝でいっぱいの気持になった。
「夏美さんくらい、たくさん食べてくれるとご馳走しがいがあるなあ」
にこにこしながら、隆が言った。
夏美は急に恥ずかしくなってしまった。
「すみません、遠慮なくめいっぱいご馳走になってしまって…」
私の分は払いますから、と言えればいいのだろうが、お財布には小銭しか入っていない。
夏美は考えた。どうにかして、隆に借りを返すことはできないだろうか。
「隆さん!」
思い切って初めて名前を呼んだ。
「あの、私に隆さんの似顔絵、描かせてください。もちろん、お代はいりません。この素敵な食事のお礼に…ダメですか?」
夏美の渾身の切り札だった。とはいえ、普段、五百円でやっている似顔絵だ。とても今夜の料理代には足りないだろう。しかし、今の夏美にできることを、他に思いつかなかった。
「僕を描いてくれるんですか?」
隆は、目を輝かせて言った。あ、嬉しそうだ、と夏美はほっとした。でも、と隆が言う。
「でも、ここで夏美さんに似顔絵を描いてもらうのは、ちょっともったいないなあ…」
もったいない、の意味がわからず、夏美はきょとんとしてしまう。
「夏美さん、お腹も満たされたし、ちょっとひと稼ぎ、しませんか」
隆は、いたずらっ気のある目つきで、夏美を見据えた。
隆に連れてこられたのは、八時過ぎでもまだ夜はこれから、と言うような人通りの多い場所だった。歩道をはさんで、イタリアンや、フレンチ、創作料理の店などが立ち並んでいる。これから女子会をするのか、女子のグループがいくつも行き来していた。
「美味しいです…!」
「でしょう。牡蠣だけじゃなくて、他のも美味しいんですよ。僕もいただこう」
二人で、美味しいと言い合いながら二つの皿をカラにした。
「美味しかった…すごい、美味しさでした」
夏美は目をうるうるさせながら言った。こんなにまともにお腹いっぱいに食べたのはいつ以来だろう。お腹もいっぱいだったが、ご馳走してくれた隆にも感謝でいっぱいの気持になった。
「夏美さんくらい、たくさん食べてくれるとご馳走しがいがあるなあ」
にこにこしながら、隆が言った。
夏美は急に恥ずかしくなってしまった。
「すみません、遠慮なくめいっぱいご馳走になってしまって…」
私の分は払いますから、と言えればいいのだろうが、お財布には小銭しか入っていない。
夏美は考えた。どうにかして、隆に借りを返すことはできないだろうか。
「隆さん!」
思い切って初めて名前を呼んだ。
「あの、私に隆さんの似顔絵、描かせてください。もちろん、お代はいりません。この素敵な食事のお礼に…ダメですか?」
夏美の渾身の切り札だった。とはいえ、普段、五百円でやっている似顔絵だ。とても今夜の料理代には足りないだろう。しかし、今の夏美にできることを、他に思いつかなかった。
「僕を描いてくれるんですか?」
隆は、目を輝かせて言った。あ、嬉しそうだ、と夏美はほっとした。でも、と隆が言う。
「でも、ここで夏美さんに似顔絵を描いてもらうのは、ちょっともったいないなあ…」
もったいない、の意味がわからず、夏美はきょとんとしてしまう。
「夏美さん、お腹も満たされたし、ちょっとひと稼ぎ、しませんか」
隆は、いたずらっ気のある目つきで、夏美を見据えた。
隆に連れてこられたのは、八時過ぎでもまだ夜はこれから、と言うような人通りの多い場所だった。歩道をはさんで、イタリアンや、フレンチ、創作料理の店などが立ち並んでいる。これから女子会をするのか、女子のグループがいくつも行き来していた。