御曹司は天使クラス ~あなたのエールに応えたい~
隆は、オープンテラスの店の店員に声をかけてなにやら話し込んでいる。そして脇にあったテラスの二つの椅子をさっと持ち上げた。人通りの邪魔にならない所に向かい合わせの形で、椅子をぽん、と置く。
「はい、夏美さん、ここに座って」
「え…え?」
隆に腕をひっぱられ、椅子に座らせられてしまう。
その横に立った隆は、目の前を通り過ぎようとしたOL風の女性に声をかけた。
「お嬢さん。似顔絵いかがですか。ここにいる画伯が素敵なあなたを描きますよ」
にっこりと屈託のない笑顔で隆はそう言った。微笑みかけられて女性の頬がぱあっと紅潮する。
「似顔絵はちょっと…」
頬を赤らめながら、女性はもじもじしている。
「ご安心ください。この画伯が、おうちのインテリアになりそうなあなたの絵を描きます。なんと、たったの二千円で!」
「にっ…!」
二千円なんて出しませんよ!と大声を出そうとした夏美だったが。女性は言った。
「じゃあ…お願い、しよう、かな」
うそぉ!と、叫んでしまいそうになるのを、夏美は必死の思いでこらえた。絵の道具をすぐ側にたぐり寄せる。ぱくばくさせていた口をぐっとつぐんで正気に戻った。
ここは頑張りどころ。ちゃんと描かなきゃ!
夏美は、立ったままの女性に微笑みかけた。
「どうぞ。リラックスしてください」
椅子をすすめると女性は夏美の真向かいに恥ずかしそうに腰かけた。
女性に見えない角度で、ちょっとだけ深呼吸して、夏美は絵を描き始めた。女性は物静かな雰囲気の人だった。女性の穏やかに微笑んでいる様子をイメージしながら、夏美はペンを滑らせる。七分くらい経ったところで、ペンをパステルに変えた。色を乗せていくと素っ気なかった絵が花開くように鮮やかになっていく。
「…できました」
すっと夏美は女性に絵を差し出した。
「わ…これ、私?ありがとう」
静かだった彼女の表情が笑みに変わる。この瞬間があるから、似顔絵描きってやめられないんだよな、と夏美は改めて思った。
その様子を見ていた女子三人組が、一斉に言った。
「こんな感じの、私も描いて欲しい!」
「私も!」
「ええー、私もっ!」
よくよく見れば、その三人組の後ろにも行列ができている。そして見事に女性ばかりだ。さっきの女性と同じように、隆の魅力につられて並んだ女子たちなのだろう。
隆さんの威力、凄い…!
「はい、夏美さん、ここに座って」
「え…え?」
隆に腕をひっぱられ、椅子に座らせられてしまう。
その横に立った隆は、目の前を通り過ぎようとしたOL風の女性に声をかけた。
「お嬢さん。似顔絵いかがですか。ここにいる画伯が素敵なあなたを描きますよ」
にっこりと屈託のない笑顔で隆はそう言った。微笑みかけられて女性の頬がぱあっと紅潮する。
「似顔絵はちょっと…」
頬を赤らめながら、女性はもじもじしている。
「ご安心ください。この画伯が、おうちのインテリアになりそうなあなたの絵を描きます。なんと、たったの二千円で!」
「にっ…!」
二千円なんて出しませんよ!と大声を出そうとした夏美だったが。女性は言った。
「じゃあ…お願い、しよう、かな」
うそぉ!と、叫んでしまいそうになるのを、夏美は必死の思いでこらえた。絵の道具をすぐ側にたぐり寄せる。ぱくばくさせていた口をぐっとつぐんで正気に戻った。
ここは頑張りどころ。ちゃんと描かなきゃ!
夏美は、立ったままの女性に微笑みかけた。
「どうぞ。リラックスしてください」
椅子をすすめると女性は夏美の真向かいに恥ずかしそうに腰かけた。
女性に見えない角度で、ちょっとだけ深呼吸して、夏美は絵を描き始めた。女性は物静かな雰囲気の人だった。女性の穏やかに微笑んでいる様子をイメージしながら、夏美はペンを滑らせる。七分くらい経ったところで、ペンをパステルに変えた。色を乗せていくと素っ気なかった絵が花開くように鮮やかになっていく。
「…できました」
すっと夏美は女性に絵を差し出した。
「わ…これ、私?ありがとう」
静かだった彼女の表情が笑みに変わる。この瞬間があるから、似顔絵描きってやめられないんだよな、と夏美は改めて思った。
その様子を見ていた女子三人組が、一斉に言った。
「こんな感じの、私も描いて欲しい!」
「私も!」
「ええー、私もっ!」
よくよく見れば、その三人組の後ろにも行列ができている。そして見事に女性ばかりだ。さっきの女性と同じように、隆の魅力につられて並んだ女子たちなのだろう。
隆さんの威力、凄い…!