僕らの紡いだ音!

「えー、ではペアを決めてくださいねー。」
『はーい!』
そういうとみんな仲のいい友達と組み始めた。
「一真く~ん!一緒に組もう!」
そういってシノに近づく女の子がいた。
(あっ…。)
その子はこの前モカのことを嗤っていた一人だった。
(シノと組みたかったな…。)
そう思いながら同じクラスの子に声をかけようとした時―。
「モカ、俺と組もう。」
そういわれて振り向くとシノがいた。
正直に驚いたけど、断るなんて考えはなかった。
「うん!」
でもそれに一番反応をしていたのはシノを誘っていた女の子だった。
「ちょっと!なんで篠宮さんなの!同じクラスの人同士で組まないとダメでしょう!ねぇ、先生!」
「そんな決まりはないけれど、できればそのほうがいいかな…。」
「ほら!だから、私と組んでよ、一真君!」
「なんで君と組まないといけないの?先生もできればって言ってたじゃん。」
それにと付け加えるように言った。
「俺、モカの悪口いうやつって嫌いなんだよね。」
だから君とは組まないよと、シノが言うとその子は泣いた。
「なっ…なんでぇ…。篠宮さんなんて親に捨てられた子じゃん。私のほうがいいに決まってるのにぃ…。」
そういいながら泣く少女にシノは殴りかかろうとした。
それを萌香が止めた。
「シノ!やめて!私は気にしないから!」
「モカ!放せ!こいつ許せね!」
「シノ!やめて!だって本当のことだもん…。この子の言ったの、本当のことだもん…。」
そういうと、自然と涙がこぼれた。
その瞬間、シノを止めていた手が離れ、シノはその子を殴った。
でも、誰もそれを止める者も、シノを怒る者もいなかった。


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