僕らの紡いだ音!
「……で、なんで私が怒られたのよー!」
そう叫んだけれど、取り巻きの子たちは苦笑いをするばかり。
確かに人の家庭の事情のことを言うのは違うかもしれないけれど、でも殴ることなくない?
それとも私が全面的に悪いの!?
あの時、誰も助けてくれなかったし、ひどくない!?
そういっても、先生には怒られるし…。
「でもさ~、本当のところはどうなんだろうね~。」
「何が…?」
「篠宮さんが、孤児って話。なんか訳ありっぽくなかった?」
「あー、それ私も思った。」
「そんなの本当に決まってるでしょ。うちの親が言ってたもの。あの子が孤児だって。」
「椿姫がそういうんならそうなんだね~。」
本当のことを言って何が悪いっていうのよ。
そう思いながら、教室に行くと一真君と篠宮さんが話してるのが見えた。
のぞき見ようとは思わなかったけれど、なんとなく気になって扉に耳を寄せて聞くことにした。
「やっぱり、あいつ許せねーよ!モカは捨てられてないじゃんか!」
「捨てられたようなもんだよ…。あの人たちにとってモカはいらないってことだったんだもん。」
「そんな奴がモカのことを血眼になって探すかよ…。」
「あの人たち、結構馬鹿だよね。自分の娘を殺した後にその重要性に気づくなんて…。」
「まぁ、モカが死にかけてたところを俺の両親が見つけたんだよな。」
「あの時は本当に助かったけど…。でもよかったの…?」
「何が…?」
「あの人たち、何してくるかわからないのに、モカを入れてくれて。」
「モカは、大切な家族で、幼馴染だし。」
「ありがとう、シノ。」
そう言ってはにかんでるあの子を見ると無性にイライラする。
それを見て笑ってる一真君に対しても同じだ。
そう思うと、私は扉を開けていった。
「なんで私が怒られないといけなかったのよ!」
その声に驚いたようにする2人を見てますますイラついた。
そして、篠宮さんの前に立って今まで思っていたことを全部ぶつけた。
「なんで私が怒られないといけなかったのよ!何一つ間違ったことを私は言ってないわ!それなのにどうして私が怒られるのよ!?全部、元はといえば、あなたのせいじゃない!あなたがいるから全部おかしくなったんでしょ!なのに、私のせいにされて…。あなたなんか死んじゃえばよかったのよ!」
そう一思いに言うと、それまでただ聞いていた篠宮さんは言った。
「……言いたいことはそれだけ…?」
「……え?」
「言いたいことはそれだけって聞いてるんだけど。」
「ええ、それだけよ…。」
「そう、言えてよかったね。」
それだけを言うと、篠宮さんは一真君のほうを向いていった。
「シノ、もう帰ろう?」
「そうだな。そういえば、今日はパーティーやるって母さんが言ってたしな。」
「そうだっけ?」
そう他愛ない話をする姿を見て腹立たしかった。
でも、すれ違いざまに篠宮さんは底冷えする声で言った。
「言いたいことを言える幸せを当たり前って思ってる人って私嫌い。」
その言葉の意味をその時の私は知る由もなかった。

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