僕らの紡いだ音!
「ただいまー」
「ただいまー!」
そう2人で玄関の扉を開けたとき、
「ここにいるのは知ってるのよ!私たちの娘を返しなさいよ!」
「娘を返せって、あなたたちはあの子を捨てたでしょう!今更何なの!?」
母親がだれかと口論している声が聞こえた。
その声の主は忘れることのできない声だった。
モカはその声が聞こえてビクッとしている。
そんなモカの手を引いて靴をもって僕たちは2階へ急いで上がった。
そして部屋の扉を開けてクローゼットの扉を開けていった。
「モカ、入って。」
「……。」
モカは動こうとしなかったけれど、僕はモカをクローゼットに入れた。
そして荷物もすべて入れ、扉を閉めた。
そして、何事もないかのようにリビングへ向かった。
「ただいまー。あれ、お客さん?こんにちは。」
「おかえり。お客さんがいるから用事がないなら部屋で遊んでなさい。」
「はーい。」
そう言って、ジュースを飲んでリビングを出ようとした時、腕をつかまれた。
「忍君、久しぶりね。私のこと覚えてる?萌香の母だけど。」
「あっ、小母さん。久しぶり。どうしたの?うちのかあさんに用事?」
「ねぇ、忍君。萌香がどこにいるか知らない?」
そう聞いてくると思ってた。
だから僕は何でもないことのように言った。
「知らないよ。だって僕、モカが小母さんたちと引っ越してからあってないもん。久しぶりに会いたいのに、モカいないの?」
「…そう、そうよね…。変なこと言ってごめんなさいね、忍君。」
そういうと小母さんは僕の腕を放した。
僕は何事もないように笑って2階に上がった。
自分の部屋に入って、僕は座り込んだ。
どっと疲れが押し寄せ、心臓がうるさいぐらいになっている。
そして、静かにクローゼットを開けて声を潜めていった。
「モカ、静かに出てきて。」
「……。」
モカはそう言われて静かに出てきた。
家についてから一言もしゃべらないモカに対して僕はあえて明るくいった。
「トランプしよう!」
「……。」
モカは黙ったまま首を横に振った。

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